今年の春、エストニアの科学者たちが開発した世界初のDNA検査技術を用いたハチミツが話題になり、ハチミツ業界内の不正品防止、消費者と生産者の利益保護、さらにはエストニア産の純粋なハチミツの輸出の拡大が期待されている。9月5日、エストニア南部のヴィリャンディ地方のハチミツ生産者であるノルドメル社から、DNA検査済みハチミツの最初のロットが日本へ向けて出荷された。
2023年春に欧州委員会が発表した報告によると、欧州へ輸入されたハチミツの46%がシロップが添加された疑いがあり、320件のサンプルのうち147件がEUのハチミツ指令に準拠していないことが判明した。エストニア経済通信省管轄の輸出促進機関エンタープライズ・エストニアによると、日本でも同様の問題が懸念されているという。日本国内では年間約47,000トンのハチミツが消費され、そのうち45,000トンが輸入で補われている。輸入ハチミツの71%は中国産という統計がある。日本でも偽物のハチミツは増加しており、輸入されたハチミツが日本国産として販売されています。DNA検査済みのハチミツが市場に流通することで、未検査のハチミツに対する消費者の不信感が高まり、より高品質なハチミツが市場に流通する条件が整うと予想されている。
偽物のハチミツの蔓延は誠実なハチミツ生産者を窮地に追い込んでいる
今年8月には、欧州養蜂家協会の会長であるベルンハルト・ホイヴェル氏がエストニアを訪れ、エストニア養蜂家協会との意見を交換した。ホイヴェル氏によると、欧州のハチミツ市場はここ数年で非常に困難な状況に直面しており、その原因の一つとして、工業的に生産された偽物のハチミツの流入を挙げた。「偽物のハチミツが市場価格を大幅に引き下げ、誠実な養蜂家たちは競争に耐えられなくなり、養蜂家が次々と廃業しています」とベルンハルト氏はヨーロッパの市場の現状を厳しく指摘した。彼はまた、偽物のハチミツの拡散を止めるために、DNA検査が重要な役割を果たすと期待を寄せている。
蜂蜜市場の再編成に向けた革命的な機会
セルヴィア(旧健康技術開発センター)*のサービスラボラトリーの責任者であり、ユニークなDNA検査の開発者の一人であるカーレル・クリュチュコフ氏によると、このハチミツDNA検査は5年前、養蜂家から提起された問題を解決するために始まったとのこと。「テレビ番組『目撃者』で養蜂家の問題を知り、それが全ての始まりでした。数百人のエストニアのボランティア養蜂家との協力により、最先端かつ高感度なDNA分析技術に基づくエストニアのハチミツのデータベースが作られました」と、クリュチュコフ氏はこのテストの背景を説明している。
彼によれば、この検査は各ハチミツのバッチに固有の偽造不可能な指紋、すなわちDNAプロファイルを与えるという。「DNA分析により、ハチミツやミツバチが接触するあらゆる植物、細菌、真菌、昆虫が識別されます。数百から数千の種のDNA配列がハチミツの植物構成を説明し、ミツバチの病原菌や寄生虫を監視することも可能です。同時に、このDNAプロファイルは、製品の真偽や産地を特定するために使用され、植物の種類がハチミツの地理的な原産地域を明らかにします」と、クリュチュコフ氏は述べた。
セルヴィアについて
セルヴィア(旧健康技術開発センター)は、食品の安全性および関連する検査やサービスに新たに取り組む認定研究機関。現在は自立したテクノロジーカンパニーとして、科学研究と現代的なサービスを結びつける役割を担っている。
また、このハチミツDNA検査は品質管理の役割を果たすと述べています。「本物の製品は正当な確認を受け、偽造されたものは暴露されます。ハチミツの品質管理が、卸売や小売の公正な競争を確保するための貴重なツールとなると信じています」。
世界中で同様の技術が開発されているか尋ねられた際、クリュチュコフ氏は「我々の知る限り、ハチミツに含まれる全てのDNAを分析し、植物からハチミツの腸内細菌までを反映するテストは他にありません。独立した研究所として、これまでに蓄えたポテンシャルを賢く活用する必要があります。ヨーロッパ全体や主要なハチミツ輸出国をカバーする信頼できるデータベースを作成し、エストニアにおけるトップレベルのラボサービスの割合を増やしていくべきです」と、将来に期待を寄せた。
「人間がハチミツのDNAプロファイルを偽造することはできないため、このタイプの検査は世界的に標準化される可能性が非常に高いです。DNA技術や遺伝子検査は医療や法科学の分野で広く普及しており、技術的な障壁は存在しません」と、研究者は付け加えた。
DNA検査が厳格な品質管理を求める日本の顧客を納得させた
ヴィリャンディのハチミツ生産者であるノルドメル社は、夏の間に非常に忙しい作業を行いました。新鮮なハチミツを収穫し、包装するだけでなく、世界初のDNA検査済みハチミツを日本に輸出するための準備も長期間にわたって行われた。
「日本の顧客にとって、再販する我々の製品が最高品質基準を満たし、本物であることが非常に重要です」と、養蜂家でありノルドメル社の責任者であるピーター・マトソン氏は述べています。同氏によると、会社自身の確認だけでは不十分で、日本のお客様は購買および品質部門チームとともにエストニアを訪れ、ノルドメルの全作業プロセスを詳細まで確認し、納得した。
「我々はその結果に非常に満足しましたが、最終的に顧客がハチミツの真偽を確信したのは、エストニアの科学者が開発したハチミツDNA検査法によるものでした」と、マトソン氏は付け加え、国家と科学者の支援がなければ今日の成果は達成できなかったという。
「私は、エストニアという国がハチミツ業界にとって優れたパートナーであると考えています。政府による生産投資補助金による投資機会を創出し、養蜂家向けの専門的な訓練により業界の専門性を高め、新市場開拓の支援を通じて国際見本市や販売研修への参加を可能にしてくれました」と、マトソン氏は述べている。
彼はまた、セルヴィアのサービスラボラトリーの責任者であるカーレル・クリュチュコフ氏のハチミツ検査の将来に関する見解にも同意している。「今日の世界的なハチミツ市場では、ハチミツの真偽を保証する統一基準がまだ整っておらず、これが偽物のハチミツの市場への流通機会を与えています。我々の研究者が開発したこの世界唯一のハチミツDNA検査は、市場監視の新しいツールとして容易に活用される可能性があり、この方法が世界的に普及すれば、エストニアの小規模な養蜂業も再び3〜4倍に成長し、大部分は輸出向けに出荷されるでしょう」と、マトソン氏は考えている。
「今は、エストニアで行われたことがヨーロッパに広がり、市場が整理されるまで、もう少し辛抱する必要があります」と、ノルドメル社の責任者は締めくくった。